穂高岳、山の花旅

1991年8月11日〜16日

杉本敏宏、定子、美穂、深雪

8/11 8/12 8/13
高田 8:15 徳沢 7:50 横尾 8:00
木崎湖 11:00-11:40 横尾 9:05-10:00 岩小屋 8:35-8:45
沢渡 13:35-13:50 蝶ヶ岳中腹 13:05-13:27 本谷橋 9:40-9:55
上高地 14:20-15:00 横尾 15:35 涸沢 12:05-12:40
明神 16:00-16:15 分岐 12:45-12:50
徳沢 17:10 涸沢 13:00
8/14 8/15 8/16
涸沢 7:50 涸沢 8:30 徳沢 8:35
ザイテン取付 9:25-9:45 涸沢ヒュッテ 8:50 明神 9:35-11:00
穂高岳山荘 11:30-12:30 びょうぶのコル 10:45-11:10 上高地 11:45-14:30
ザイテン取付 13:55-14:10 奥又白谷出合 15:05-15:20 沢渡 15:05-15:20
涸沢 15:10 新村橋 16:20-16:30 坂巻温泉 15:30-16_30
新村橋終了 16:40 穂高町 18:10-19:00
徳沢 16:50 平岩 20:40
高田 22:00

8/11

 ようやく梅雨があけた越後をあとに糸魚川経由で大町市へ。広域農道を南下して倭から沢渡につく。ここで車を駐車場にとめ、タクシーで、上高地駐車場まで入る。この時期はまだ、そんなに混雑はしていない。運転手がテントのポールを乗せたままもどってしまったので、タクシー会社に連絡し、よびもどしてもらう。

 そんなことで上高地を出るのがおくれてしまったが、今日の予定は徳沢までなので、あわてることはない。小梨平のキャンプ場の中をぬける。多少の起伏のある道のわきには、アカバナノゲンノショウコが。がけっぷちには、ソバナが紫のベル状の花を房にしてつけている。樹林帯には、センジュガンピの白い花がひときわめだつ。

 明神池入口で小休止する。明神岳は、雲の中だ。でてすぐ、橋を渡ると、徳本峠からの道が合流する。コウモリソウとカニコウモリが葉をひろげている。クサボタンの小さな白紫もいっぱい見られる。

 もう少しで徳沢というところで、夕立。雨の中でテントを張る。夕やみとともに雨も上がり、最初のキャンプの夜がふけていく。

8/12

 はじめの予定を変えて、今日は、横尾まで行き、蝶ヶ岳に登ることにする。

 横尾までゆっくり行く。早々にキャンプ届をして、テントを張り、昼食とおやつだけ持ってでかける。

 登山道は、すぐに急登に変わる。少し登ると、樹林の下はササヤブになる。そして槍見平。槍の穂先がよく見える。正面が槍沢に向かっている。さらに標高が上がると、ササがなくなり、一見なにもない樹林になる。しかし良くみると、コバノイチヤクソウが鈴のような白い花をいくつもつけて立ち上がっている。

 上から何組かのパーティが降りてくる。登る人は、少ないようだ。

 約2500m位まで登って、引き返すことにする。ユウレイタケともいわれるギンリョウソウが木かげにひっそりと咲いていた。

8/13

 テントを撤収して出発する。今日の予定は、涸沢まで行くこと。

 出発が遅いので、もう、たくさんの人が行き来している。横尾の橋は、以前のままかしがっている。河原の中の道を行く。樹林下の笹原は、露にぬれてキラキラしている。屏風の岩壁が見えてくる。岩小屋は、岩石で埋まっていて、看板だけが名残をとどめていた。「ここの岩の下に穴があいていて、屏風岩に登る人が、泊まったんだよ。」と教えるが、まったくイメージがわかないようだ。

 河原から巻き道にはいる。しばらく登って、平になる。コメツガの樹林がダケカンバに変わり始めると、明るい陽差しがふりそそいでくる。

 本谷の橋は、昔の丸木橋からしっかりした鉄の橋になった。かけられた位置が以前よりも少し下になっている。渡ったところで休む。旧橋のたもとのわき水が飲めなくなったのは、いつのことだろう。おいしい水だったが。岩にコヒオドシが群れている。

 本谷からの登りは、いつもつらい。ゆっくりと登る。2人の子供は元気だ。美穂は、少し前を行き、深雪は、後ろからついてくる。お母さんがいつもおくれ気味。それを深雪が心配しているのだ。道が緩やかになったところで、美穂と先に行くことにする。深雪はお母さんと。ダケカンバのたけが低くなり、涸沢の雪渓が望まれるようになる。

 男の人が立ち止まって、ダケカンバの林の中を見ている。「雷鳥ですか。」と声をかける。「猿がいるんですよ。」という答え。見ると、子猿が3頭、林の中で騒いでいる。美穂も、本当の野猿ははじめてなので、興味深く見ている。登山道のすぐ近くまで来ているのには、おどろいた。上から降りてきた老人パワーは、そんなものには興味を示さず、ドンドン下って行った。

 涸沢の河原にはいる。ナナカマドの白い花がめだつ。後ろの2人がくるのを待つことにする。しかし、なかなかこない。それでまた、先に行く。道がふたつに分かれる。左手は、涸沢ヒュッテへの道だ。右手の石段の道を登る。

 人の声が、激しく聞こえてくると、涸沢のキャンプ場である。テント場を探す。ちょうど良い広さのところをみつけ、設営する。荷物をおいて、まず、小石をどかす。「石があると、寝る時痛いからね。」

8/14

 いよいよ、3000mへの挑戦である。天気は、上々。朝食の後、出発。北穂の南稜は、もう行列。ザイテングラードもたくさん登っていく。涸沢小屋で、家に電話する。涸沢の向こうに前穂北尾根がきれいな階段を見せている。

 石畳の道を登る。涸沢は、遠くから見ると、小石が敷き詰められたように見えるが、実際は、1m近くもある岩がゴロゴロしているのだ。その岩をじょうずに組んで石畳の道にしてある。小さなルンゼを渡り、左にトラバースすると、ザイテングラードの取付に出る。ここで、小休止。

 何人かの人が休んでいる。家族連れが多い。反対側の斜面は、お花畑になっていて、いろんな花が咲いている。

 ザイテンの登りは、岩場が多い。美穂も深雪もいままで登った山とは、かなり勝手が違うようだ。登り始めてすぐ、お母さんの靴の底がはがれてしまった。買ってから十年以上経つから仕方がないか。細紐を出して、これで応急修理をする。それでも、「登れない」などと言い出し、「ここで待っている」という。それで3人で行くことにする。

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