火打山 2462m
夫婦二人旅

8月8日 8月9日
高田 8:30 高谷池ヒュッテ 7:35
笹ヶ峰 9:40- 9:55 黒沢ヒュッテ 8:25- 8:55
黒沢川 10:45-11:00 富士見 9:42- 9:55
十二曲 11:30-11:40 十二曲 10:40-10:50
二つ沢 12:20 黒沢川 11:15-11:35
富士見 12:30-13:00 笹ヶ峰 12:10-13:00
高谷池ヒュッテ 13:45-14:05 高田 14:15
火打山 15:30-15:50
高谷池ヒュッテ 16:05

8月8日

 結婚して子どもができなかった時期に夫婦二人で烏帽子から雲の平に行って以来の二人だけの登山である。

 高田は朝からひどい雨が降っていたが、南の空が明るいのが救いだった。部活の合宿という娘を高校まで送り、その足で南下する。南に行くに従って小雨に変わり、中郷村あたりからはあがってしまった。陽があたり始めた杉の沢の商店で、酒を仕入れる。

アサギマダラ  笹ヶ峰の登山口の駐車場は満杯。キャンプ場の駐車場に停める。まだまだ余裕がある。登山道はもう秋の気配。アブラススキなどが穂を垂れている。木漏れ日の中を、木道などの上を調子よく登っていく。
 黒沢川は、水害の跡がそのままになっている。橋となった倒木を渡る。水を補給し、小休止。
 十二曲。突然、上空からアサギマダラがフワーーッと舞い下りてきて、オオカニコウモリの花にとまる。この蝶は本当に優雅に飛翔する。大好きな蝶の一つだ。降りてきた人が、ツルリンドウを指して「ツルニンジン」といっていたが、少し登ると本物のツルニンジンがあった。しばらくして、十二曲は終る。表示がある広場で休む。今日は、風がそよともふかない。

 ちょっとした急登、岩場があり、オオシラビソの樹林帯に入る。ひんやりとしている。積もった落ち葉のなかに、所々ギンリョウソウが見られる。傾斜が緩くなって、二つ沢。いつもは涸れているのに、今日は豊富。何人かが水を補給しながら休んでいた。
 一登りして富士見。雲が多く、富士はとても見えない。腹ごしらえなどして大休止。
 黒沢岳を巻いて行く道は、ダケカンバの根元にあちこちに水溜まりができていた。シロバナヘビイチゴはツルがあるが花も実もなし。

火打山頂にて  高谷池ヒュッテには、予定よりも少し早く着いた。アルバイトに「築田さんは」と聞くと、「裏にいますよ」という。「泊めてもらいたいんだが」というと、困惑顔。それでも「別々で、食事無しなら」というので、「それでいいです」と応える。上がって、東の出入口から外を見ると築田氏が居た。「一番混んでる時に来て、申し訳ない。妻です。」というと、ニコニコ笑って、「杉本さん、飛び入りで二人。」とアルバイトにいう。荷物を置いて、「今日は調子がいい」というので、火打山に行ってくることにする。

 奥高谷、イワイチョウが黄色に色づいている。小さなウメバチソウが群生している。天狗の庭への下りでは、オヤマリンドウの濃紫色が鮮やか。天狗の庭入口の池に映る逆さ火打は今日はダメ。稜線に出る。いつも豊かな残雪がある北斜面のどこにも雪がない。珍しい。チシマザクラのアーチをくぐりぬけると、草原にトリカブトの群落。コバイケイソウは今年はどこも花がない。マルバダケブキは終わり、岩場にヒメシャジンが咲き乱れている。一休みして丸太で作られた階段を登ると雷鳥平。
 ハイマツの稜線は、心地よい風が吹き、すがすがしい。最後の登り。名残のミヤマタンポポが、大きな黄色の花をつけていた。
 一汗かくと火打山頂上。何組もの人がいる。西の雲の切れ間に、最近周囲4Km外の登山が解禁になったばかりの焼山が、肩から白い煙を上げている。北側はすべて雲海。東は時々妙高山が大きな頭をあらわす。風が強く、雲が絶え間なく行き交う。

 下り、その雲が急にあたりを覆う。これが夏かと思うほどの寒気。
 ヒュッテの外のテーブルで夕食。缶ビールで乾杯。そして酒。酔いがまわる。与えられたねぐらは、布団部屋の隅と通路の脇。100人を超える客だという。

8月9日

 暗いうちから人が動く。明るくなると西の空に、北アの峰々が茜色に染まって現れる。外のテーブルでコーヒーをいれる。

 ほとんどの人が出た後、ゆっくりと黒沢ヒュッテに向かう。黒沢岳の北稜線が矢代の谷に落ちる、その縁に沿って、登山道がある。昔からみると崩れて少しづつ南に寄ってきているようだ。緩やかにオオシラビソなどの混交林を登り切って、笹原に出る。大きなダケカンバの向こうに黒沢湿原が広がる。ネマガリダケを切り開いたクッションの効いた道を軽快に下る。黒沢ヒュッテの青い八角屋根が近づいてくる。
 小さな湿地を右に見て、少し登り返すとヒュッテの前に出る。日だまりの入口に大きな救助犬がゆったりと座っていた。水がわりに缶ビールをあける。稜線から降りてくる人たちの姿が間近に見える。

黒沢湿原にて  黒沢湿原は、妙高の外輪山=大倉山の緩やかな斜面と黒沢岳の間に位置する広い平地だ。真ん中に黒沢川の源流が蛇行し、大倉山寄りに木道が敷かれている。丸太の輪切りが昔の道を偲ばせる。お花畑は花が終り、一面の笹原に、所々水芭蕉の葉が見え隠れしている。乾地と湿地とで見事に大きさが違う。
 木道の脇に一本のダケカンバがある。厚い雪に耐えてきた雄姿を誇っているようだ。湿原の南端で黒沢川を渡る。以前、川をそのまま下った遭難者がいたことを思い出す。一面ハクサンフウロのピンクに埋まっているはずが、緑のなかに点在するのみ。夏はとうに終っている。

 富士見までは緩やかな登り返しだ。オオシラビソの樹林帯に入るので風がほてった身体を冷ましてくれる。樹高が低くなるとそこが富士見だ。
 ここからはいつもの道。登ってくる人たちを見ていると、不思議な現象に出会った。我々が休むべきところと考えている所では休まず、もうちょっとで休憩所というような場所で休んでいるのだ。山には、昔からその山の登り方がある。今のハイカーはそんなことはお構い無しだ。先日、「最近、アルペンガイドが無くなった」という話があった。あのガイドブックは、その山域のベテランが山を語っていて、山そのものが学べるものだった。アウトドアと登山とはやはり違う。

 明星山荘で昼食。そして、帰宅。


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