2009年07月18日
八ヶ岳
白駒荘〜ニュウ〜天狗岳〜硫黄岳〜横岳〜赤岳頂上小屋
 
単独
 
 
白駒荘 7:35 硫黄岳山荘 13:53-14:00
ニュウ 8:32-8:45 横岳 15:05
中山峠 9:35 横岳三叉峰 15:13-15:15
東天狗岳 10:52 地蔵の頭 16:05
根石岳 11:20 赤岳展望荘 16:10
夏沢峠(やまびこ荘) 12:00-12:30 赤岳頂上小屋 16:50
硫黄岳 13:30-13:36    
 
 
 長い長い一日だった。白駒荘の主人は「早い人は6時間位、ゆっくりしてても8時間位」といっていたが、たっぷり9時間もかかってしまった。強風と雨と霧で何にも見えない中をただ黙々と歩き通した。最後の展望荘からの登りは本当に「もういや」という気持ちに鞭打っての登りだった。

 白駒荘の朝食は、豪華だった。とても食べきれず、一部手をつけずに残してしまった。

 白駒荘を出て、白駒池に沿って歩く。池を一周する道と分かれるとすぐに「白駒湿原」というのがあった。途中青年2人に出会う。追い越して登って行った。樹林帯では風は樹林の上を吹いているし、雨もアオモリトドマツなどに受け止められていて、「まあ、こんなもんかな」という感じであった。ところがニュウに出た途端、西からの強風が吹きつけてきた。ガスで何も見えないので、ニュウへは上がらないで行く。
 稜線は吹きさらしだ。緩やかな登りではあるが、風は何ともしがたい。本来、右手に稲子岳の火口が見えるのだろうけれど、それは深い霧の中。ただ黙々と歩くのみ。
 中山峠から先の天狗岳の登りはさらにきつかった。眼鏡は役に立たないので外して仕舞ったのだが、近視だからなかなか距離感がつかめない。それがかえって行動を慎重にさせてくれた。白駒荘の主人から「天狗の稜線では風に気をつけて」といわれていたが、その忠告が身にしみる風雨だった。

 いったん下ったコルで本沢温泉への道を分け、根石岳への登りになる。少し下ると、尾根が広くなり根石山荘への分岐。若い二人連れに出会う。オーレン小屋から上がってきたのだという。「天狗を越えたい」というが、そんな身なりではない。「こことは風が格段に違うよ」というと、「じゃあ、戻ります」と極めて素直だ。小高い丘の上で直進すればオーレン小屋になるが、直角に東に折れる。緩やかな下りが続き、やがて樹林帯の中にやまびこ荘が現れる。
 左手から若い男女が来る。本沢温泉から登ってきたのだという。ここにいるとあの風がうそのようだ。ただ雨がシトシトと降っているだけだから。昼食を摂るために、やまびこ荘の中に入る。小屋番が一人いて、お茶を出してくれた。いろいろ話をした。ヤマネが出たり、モモンガの餌付けをしているそうだ。それで「モモンガのいる宿」とアピールしているらしい。外で数人の男女の声がする。オーレン小屋から上がってきたようだ。どこへ行くのだろう。

 気を引き締めなおして硫黄岳へと向かう。急な登りが続く。まだ昼過ぎだというのに、夕方のような暗さだ。樹林帯を抜けると再び嵐が待っている。長ーーい時間が経過したように思ったが、1時間ほどで硫黄岳に着いた。ケルンの影に身を寄せる。女性一人と数人の男性のパーティが上がってきた。写真を撮ったりしている。この風と雨の中で良くやるよ。「どちらまで」「赤岳頂上小屋まで」「じゃあ、泊まりは同じですね」こんな会話をしていると、若い女性が3人上がってきた。この人たちも頂上小屋まで行くという。ずっと一人で歩いてきたから、後ろであれ前であれ、人がいるということは本当に心強い。
 硫黄岳稜線の吹きっさらしは、10年近く通った正月の山行でいやというほど思い知らされている。雨とガスで何も見えないから、ケルンの存在は「安全・安心」そのものだ。そのケルンの影に入ると、風がうそのようだ。硫黄岳山荘(かつては硫黄岳石室といわれ、地図にもそう書かれている)は稜線から一段低い所にある。まだ2時だというのに、夕暮れかと思うような暗さだ。山荘入口まで降りて風を避け、休みながら腹ごしらえする。

 ガレ場の稜線を風に耐えながら登っていく。横岳の北端のピークに出る。ここから長い横岳の稜線が続く。稜線の東側に登山路があるところが多いので、西からの強風だから、これはたいへん都合が良い。幾つかのピークを越えると横岳頂上。さらに東に杣添尾根を分ける三叉峰を越える。雨で眼鏡をはずしたので、それが幸いした。下りに慎重になったからだ。さらに石尊峰、日ノ岳を越えるとようやく二十三夜峰、地蔵の頭である。そして赤岳展望荘にたどり着く。ここも地図では「赤岳石室」となっていた所だ。入り口の方に寄って風を避け、休む。宿泊客かと思ったのか、小屋の中から人が見ている。
 「さあ、あと一登りだ」と思うのだが、だいぶ疲れがたまってきたようだ。気力が萎えそうになるのを奮い立たせて立ち上がる。再び雨の中を黙々と登り始める。そして40分。やっとのことで赤岳頂上小屋に着いた。

 戸をあけて中に入る。さすがに「ホッ」とする。受付に行く。予約は150人ほどあったが、この雨で今日の宿泊客は100人ほどだそうだ。おかげで余裕をもって寝れるようだ。手続きを済ませ、雨具をストーブの近くにつるす。
 ザックを部屋に置き、戻って缶ビールを開ける。スーーーーッ、とのどを流れ落ちていくのが分かる。5時半からの第2陣の食事まで、ゆっくりする。

 それにしてもすごい雨と風だった。長い間山に登っているが、こんな日に登ったのはあまり記憶にない。