13日、八ヶ岳登山に出かけた。真教寺尾根を登り、翌日、稲子湯を経由して帰るという計画である。
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当初は、台風一過の青空が望める予報だったが、どんどんと変化が速まり、梅雨前線が発達してくるものの、大荒れになることはないというのが、事前の天気予報だった。長野県も山梨県も「曇り時々晴れ」という感じだ。
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上越は曇りだったし、清里に着くまでは曇りだった。電車から降り、タクシーに乗り込む頃から、ポツポツとあたってきた。リフトの乗り場では、「リフトに乗っていて雨具を着るのは危険」といわれ、「雨具を着ようか」思案した。
リフトを降りて歩き出しても、そんな状態だった。賽の河原で降りてきた女性が合羽をたたんでいた。牛首山のベンチで食事をしながら、少し雨脚が強まったので、雨具を出した。この程度の雨ならば、登れるだろうとの判断である。
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扇山を過ぎた辺りからだろうか、雨に加えて、急に風が強くなり出した。樹林帯の梢が鳴っている。2500m辺りまで来ると、林の中だというのに、立っているのも大変なほどの強風が吹き荒れ始めた。動けない。この先、樹林帯を抜けて稜線に出た時が問題だ。この風の強さだと、最悪、吹き飛ばされることも考えておかなくてはならない。様子を見ながら思案する。一向に弱まる気配はない。
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決断。引き返す。
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決めてしまえば、あとは躊躇なく、できるだけ早く下山することである。ただし、風も雨も強いので、最新の注意が必要だ。滑る泥と、特に転倒。
扇山まで降りてくると、強風はウソのようにやんだが、逆に雨が強くなった。真っ直ぐに降り注ぐ。えぐられた登山道は、川のような状態である。滑らないように、より慎重になる。
牛首山ではその雨も少し弱まってくれたので、腹ごしらえする。
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賽の河原まで来て、「あと3分でリフト」のはずだったが、リフト乗り場に着かない。通り過ぎてしまったようだ。鉄則に従い戻る。リフト乗り場に入る所が、鹿よけの電気策で封鎖されていた。それで通過してしまったのである。リフトはもう動いていなかったし、人の気配がなかった。
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仕方がない。リフト乗り場まで歩いて降りることにする。カラマツ林の中の道は、通る人が少ないのだろう、半分ササで覆われている。そしてその道は、川のようだったり、池のようだったり。ジャブジャブと行くしかない。
道はリフトからどんどん離れていく。「美し森」に向かっているのだ。しばらくして羽衣池に出る。何とか目途がついた。左手にロッジが見えてきた。砂利の車道に出て左折すると、ロッジの駐車場だった。
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大きな建物に一つだけ明かりが点いていた。が、入口は鍵がかかっている。裏手に回ると、ちょうど人がゴミ捨てに出てきた。「タクシーを呼んでほしい」とお願いする。
入口の方に戻ると、「駅まで送ってくれるという人がいる」という。「今、タクシーを頼んでしまった」と丁重にお断りした。
ところがそのタクシー、待てど暮らせど来ない。ぬれたものの始末をし終わった頃、「今、タクシー呼びました」という声。10分以上も無駄をしてしまった。「こんなことなら、さっき乗せていってもらえば良かったね」
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清里駅に着いてみると、19時まで電車がない。弱り目に祟り目である。
結局、高田に着いたのは、深夜23:44だった。帰宅してシャワーを浴び、缶ビールを1本開けて就寝した。
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