2008年7月13日
「合併後のまちづくりをどう進めるか」講演会
杉本敏宏の報告
 
 
 どうも皆さん、こんばんは。今ご紹介いただきました、今度このくびき野地域問題研究会の事務局長をやることになりました杉本です。よろしくお願いします。4月の28日まで市会議員をやっておりましたが、29日から何も職のない無職で今過ごしております。「こういう仕事をするのが、今までの経験なんかを生かすいい道かなあ」と思って、引き受けたわけであります。

 私の方からは、皆さんのところにお配りしてあります「地域自治区・地域協議会」と書いた資料に基づいて若干の報告をします。

はじめに
 今年の3月議会で自治基本条例が制定されました。自治基本条例というのは「自治体の憲法」といわれていますが、その中でいろんなことが決められています。今日はその話が主題ではありませんので、細かいところは割愛します。
 上越市の条例の大きな特徴の一つは、都市内分権ということで、地域自治区・地域協議会のことを規定したことです。それからもう一つは、常設型の住民投票制度を導入したことです。また、市や議会・住民の役割・責務を決めておりますが、議会だけではなくて議員の役割・責務を入れたというのも他のところにはない大きな特徴だと思います。
 この自治基本条例の第6章に都市内分権というのがあり、31条と32条の二つで細かな規定をしております。31条の方では、都市内分権を推進していくということを宣言しております。そして32条では、「市は前条の仕組みとして、市民にとって身近な地域を区域とする地域自治区を設置する」と述べています。「都市内分権を進めていく仕組みの一つとして地域自治区という制度を設置する」と明言したのです。これが上越市の憲法とも言うべき自治基本条例の中に規定されたということですから、その方向で行政も議会も市民も進んでいくことになります。

1.2期目の無投票をどう見るか
 そんなことを前提にして、その次に話を進めたいと思います。
 「2期目の無投票をどう見るか」ということです。今回市会議員選挙と合わせて13区の地域協議会の委員の選任が行なわれました。皆さんご承知のように、届出−−私を委員にしてくださいという届出−−をした方が、定数と丁度あるいは定数以下で、選任投票が行なわれませんでした。このことから、「この制度はいったいどうなるんだ」とか「選任投票が行なわれなかったから意味を失ったのではないか」という議論も一部ではあるようであります。

 それでそれをどう見るかということですが、数字はそこに書いておきました。
 2005年と2008年を比べると、届出をする人の数が減ったようにも見えます。しかし私は、自主的に手を挙げた人が、145人もいたことを大きく評価したいと思います。
 「全体の動向」という表を載せておきましたけれども、総定数が192ですが、1期だけやって辞めた方、2期になって初めてなられた方、継続した方を全部数えて見ますと、304人に上るわけです。これだけの方が、7年間の間に、地域協議会の委員という職、仕事をされるわけです。「これは上越市の自治の前進にとって大きな役割を果たすのではないか」と、私は思っています。
 そしてその中でも80人の方が、1期目に続いて2期目もやるというふうになった方です。これも大きな出来事だと思います。継続率でいうと41.7%ですから、4割以上の人たちが、「もうやだよ」という事ではなくて、「がんばってもう1回やるよ」といわれたわけで、やはりこれはそれなりの役割を果たしてきたからこそ、こういう数字となって現れたんではないかと思っています。

 「政治の良し悪しを見るときには、女性の政治参加の度合いを見れば判る」と、よく言われます。下の方に「女性に関して」という表を載せておきました。
 女性は、1期目27人の内、半分の13人が2期目に継続されました。全体の比率よりも高いんです。そういう特徴がありました。それから26人から35人に増えた、これも今回の大きな特徴だと思います。

 以上よく見てみますと、この地域自治区・地域協議会という制度は、「ダメな制度、要らない制度」ということではなくて、やっぱり住民の中に、とりわけ13区の皆さんの中には、「一定の地歩を築いた」のではないかと思うわけです。

2.1期目3年間の成果と実績
 2番目の「1期目3年間の成果と実績」については、後で二人の方からお話していただきますので、問題提起という形で二つだけ書いておきました。

 地域協議会の委員の皆さん方には、「町村議会議員に代わる自治の担い手になってもらう」ことが期待されていると思いますが、そういうふうなものになれたかどうか、です。「充分ではないけれどもそういう芽が出てきた」「そういう役割を果たしつつあるんではないか」というのが、私の感じです。

 もう一つは、「旧町村時代の遺産」、旧町村時代の良い面悪い面、それらがごちゃ混ぜになって、まだ引きずっているのかな、その辺をどうして行くのかなというのが、これからの課題かなと思っています。

3.旧上越市への導入〜〜〜一般制度への展望
 この制度は、合併した時には、合併特例法に基づいた制度として導入しました。それを今度地方自治法による制度に切り替えました。特例による制度ではなくて、一般制度として位置付けることによって、自治基本条例でかかげた目標に到達できることにもなります。
 一番のネックは、「旧上越市にこの制度をどういうふうにして導入していくか」です。

 市は、昨年の丁度今頃、16の区割りを発表いたしました。概ね、昭和の大合併−−−昭和29年30年前後に行なわれた大合併−−−の前の町村の区割りを基本にした提案です。
 市の方も説明会を開いたりして来たわけですけれども、いろんな意見が噴出しました。
 一つは、「この区割りでいいのか」という議論でした。
 最小の桑取区が、300の後半です。一方、高田区という3万人を超える区ができる。100倍の開きがある。委員の定数は、300人のところで12人、3万人のところで22人、「これで果たしていいのか」という議論です。
 私の考えは、地域自治、即ち「地域の人たちの眼の見える、手の届く範囲」ということで考えると、「3万人というのはいかにも大きすぎる、もう少し細分化して少なくとも1万人を下回るような形にすべきではないか」と思っております。
 そう見ていくと、高田の中心部、3万人の高田区をどうするのかということになります。そこには、非常に難しい問題をはらんでいます。中学校区と小学校区が入り組んでいてたいへん複雑です。中学校区ごとに分けるとしても、小学校の時と中学校の時で違う区へ行くというようなことが出てきたり、たいへんな事態になります。消防団の組織がまた、複雑に絡んでいます。町内会長の連絡会の組織もまったく無関係につくられています。
 そんなことで、高田区を適当な区分けをすることが本当に難しいと思いますが、しかし、地域自治ということを考えればやはり、もっと狭い範囲で少人数の方がいいんではないかと思います。

 もう一つ、議会と町内会長あるいは町内会長の協議会と、地域協議会とのかかわり、役割分担、何を担っていくのか、その辺が「よくわかんないよ」という議論がありました。これはもっと丁寧に説明していかなけばならないと思います。
 ある町村長の経験者の方にこんなことを聞いたことがあります。
 「町長時代に、何か重要なことを決めようとする時、町内会長会に図りましたか、それとも諮問機関でしたか。」と聞いたら、「そんなの決まってるじゃない、政策決定は町内会なんかに聞かないね。」と、この方はいいました。地域協議会と町内会との決定的な違いはここにあります。
 ただ、そんなふうに大上段に振りかぶって話をしても仕方がないですから、実際の問題で納得してもらうしかないと思います。今回の直江津図書館問題というのは、このことを考える上でいい材料を提供してくれたと思っています。

 「なかなかその役割を理解できない」ということの原因を探ってみますと、13区の場合には、「合併で議会がなくなる。さあどうする。」ということで、議会の代替機能としての役割が地域協議会に課せられたと思います。それですんなりある意味進んだと思うんです。また、どこの区でも、「地域事業費の使い方をどうするか」ということが、議論になりました。
 ところが今度、高田でも直江津でもこれをやろうとすると、この二つがないのです。目玉なしの制度の導入です。そういう問題から出てきていると思います。

 高田区3万人のところに、改選前、市会議員が8人いました。市の案が出されたときに、その8人の議員が集まって、「どうしたもんだろうか」という話をしました。議論百出でした。しかし「高田区では広すぎる」というのが8人の共通した意見でした。
 その後、「旧上越市の30人の議員全員で、高田・直江津の区割りも含めて、どうするかということを議論する場を設けた方がいいんじゃないか」というような話を出したんですが、これは不発に終わりました。ただ不発に終わりましたけれども全体の意向としては、「高田・直江津にこの地域自治区を入れるのは、今の住民の状況からすれば、時期尚早だ」というので一致したわけです。
 そんなこともあって行政の方も、4月の市議選にあわせるという話を、先送りにしたということでもあります。

 最後の問題ですが、「市議選と選任投票が同一日というのはどうなのか」というのが、やはり出ました。これは8人で話したときに大きな話として出てきました。
 「13区ではできたんだろうけれど、旧上越市では難しい」「次の市会議員選挙は全市1区になって、そういう選挙の中でこの選任投票をやるということになると、相当無理がある」というのが、その時の皆さんのご意見でしたし、私もそういうふうに思いました。
 出てきたのは、「市長選挙か県知事選挙に合わせたらどうか。そうすればもう少し選任投票全体がやりやすくなるし、住民の皆さんに納得してもらえる時間も稼げるのではないか」ということでありました。

 そんなことで、雑駁ではありますけれども、この間の動きも含めてご報告をさせていただきました。ありがとうございました。