月初めだったと思うが、上越タイムスに「糸魚川ジオパークツアー マイコミ平ツアー」という記事があった。それに申し込んだ。
マイコミ平へは以前、長崎明元新大学長など新大の研究者の方々と行ったことがある。当時はある程度自由に入山でき、山菜取りの人にも出会ったものだが、その後、「入山禁止」になっていて、今ではこんな機会でもないと入れないのだ。
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10:40糸魚川駅出発ということなので、直江津から高岡行きの電車に乗って行った。3両編成の電車はガラガラ。糸魚川駅に着くとマイクロバスが待っていた。担当の三愛旅行社の社員から、弁当の笹寿司とヒスイウォーター、それに案内文書などを受け取る。「一番前の運転席の横へ」といわれ、そこに陣取る。「ガイドは小野健さんです」と告げられる。もう80歳になると思うが、すごい人だ。
街を抜け、田海から田海川を遡る。明星セメントの工場入口で、ガイドの小野健氏と二人の市職員と合流する。工場の横を通り、ベルトコンベアーの下をくぐる。福来ヶ口大鍾乳洞の噴き出し口が見える。以前はこの口まで行くことができたが、今はどうなのだろう。
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この辺りの山の景観は、頸城の山々とは違っている。同じ照葉樹林帯なのだが、何となく陰険な感じがするのだ。石灰岩と多雪地ということが、そんな雰囲気をつくっているのだろうか。
トンネルを抜けると黒姫山東南面の石灰採掘現場の剥き出しの様相が見えてくる。小野健氏によれば、たくさんのドリーネがあった所だそうだが、縦穴を掘り、そこへ回りから掻き落として、コンベアーで運び出しているのだそうだ。
右手を流れる田海川は伏流となっている。やがて浄土門が見えてくる。石灰の台地を田海川がU字形に侵食してできた地形だ。以前はこのあたりは歩いたものだったが、今はもう少し奥まで車が行く。
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駐車場広場で、小野さんの話を聞く。
2億5千万年前から1億5千万年前までの1億年の地球の歴史が凝縮されている場所だ。多くの鍾乳洞が「横穴」なのに対して、ここは「縦穴」が多く、深さ1位から4位まで(白蓮洞513m、千里洞405m、大マイコミ345m、銀鳳洞333m)を独占している。穴の中に雪渓があり、夏でも8℃の冷気を噴き出している。それが付近を冷涼にしていて、標高700m前後にもかかわらず、3000m級の高山植物が生息している。川の水が直接岩盤の割れ目に吸い込まれていく様子から「マイコミ平」といわれている。
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最初に向かったのは大マイコミである。以前は平地を流れてきた川が岩の割れ目に、まさしく舞い込んでいたが、数年前頃から2〜3m川が掘り下げられたそうで、景観が大きく変わっていた。それでも岩の間に水が吸い込まれて行く様は、不思議だ。
小マイコミは少し規模が小さい。それでも幅1m弱の川が吸い込まれている。
大マイコミに流れ落ちる川の上流を渡り、急斜面を登って、今度はロープを張った急斜面を下る。千里洞である。「先週はダイモンジソウが花盛りだった」そうだが、名残の花をつけていた。9月末まで残雪があるので、その後に花を咲かせるのだそうだ。岸壁にソバナが咲いているし、オタカラコウの群生が黄色い花をつけていた。みんな怖いもの見たさで千里洞を除く。
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さらに奥にある日本一深い白蓮洞に足を伸ばす。上から覗いても洞の中は見えない。「落ちたら終わりだよ」との声。
戻って通天洞へ行く。もちろん縦穴なのだが、他と違うのは、上の岩盤にも縦穴が開いていて、そこから「空が見える」のである。その穴から落ちてきたという大木が朽ちていた。
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前日から朝方まで雨だったので、どこもグジャグジャの泥で、靴もズボンも泥だらけになってしまった。直径500mほどの範囲を2時間半かけて回ってきただけだが、高い山とは違った面白さがあった。機会があれば、今度は花の時期に行ってみたい。
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