高橋雄二氏が明神5峰の行くというので、同行する。初めて登る山だ。
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前穂へ向かう岳沢の登山道を登る。明神南沢(5峰と最南峰の間の沢)がおそらく雪崩れであろう、おびただしい倒木で覆われていた。岳沢への登山道も倒木の山。すさまじい破壊力だ。その倒木の下に残雪があった。
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その少し上(風穴の手前)、右手の尾根にロープが張られていた。ここが5峰への入口である。突然の急登だ。それが緩傾斜をわずかに含みながらほぼ頂上まで続いている。樹林帯の中に明瞭な踏跡が付けられていて、それをたどる。所々見えなくなる所もある。積雪期の登攀路だろうか、赤布があちこちに付いている。
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ローマス君が「リスだ」という。木々を渡り歩いている。逆さに降りてきたり、飛び移ったりと、しばしその妙技に見とれる。しばらくして今度は高橋氏が「フクロウがいる」という。3羽いたというが、私が上がった時には1羽の影が見えただけだった。
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ヤセ尾根にトラロープが張られていたが、これはかえって邪魔だ。掴んでも滑る。針葉樹林からダケカンバに変わる。それを抜けると森林限界。ガレ場になる。この行程で最大の平地を過ぎて、最後の登りに掛かる。岩陵帯にイワギキョウが咲いていた。風に乗ってベニヒカゲが飛翔していた。
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頂上からはさらに3峰、明神岳、そして前穂へと続くのだが、上は雲に隠れていて見えない。奥穂も雲の中で、西穂あたりから下が見えている。「焼岳の噴煙は見えないな」。乗鞍岳も頂上は雲に隠れていた。霞沢岳が大きく見え、その前に六百山が。真下に梓川がうねっている。「すごい傾斜だね」「まっすぐ降りれそうだけど」
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下りは少し慎重になる。頂上直下登りと違うところ明瞭な踏跡を降りたのだが、ハイマツ帯のトラバースを強いられる。ダケカンバに薄緑色の小さな虫がいっぱいついていて、木を揺らすといっせいに飛び出す。吸い込まないように気を使う。どこでも落石を起こしそうだ。これにも気を使う。
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岳沢登山道の手前まで来て休む。ここまで来ると人声がする。それまでは一人も合わなかった。「この時期の穂高周辺で、人に一人も会わないなんて」そんな場所はあまりないだろう。
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岳沢を下ってくる人たちの流れに入って上高地まで戻った。
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聞いてはいたが、急登の連続で、ハードな登山だった。
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