針ノ木岳〜鹿島槍ヶ岳

1992.9.11〜14

9/11 9/12 9/13 9/14
高田 19:45 扇沢 6:10 針ノ木小屋 6:45 テント場 6:30
扇沢 22:20 大沢小屋 7:15- 7:30 針ノ木岳 7:30- 7:40 布引岳 7:05
のど 8:40 スバリ岳 8:10- 8:20 鹿島槍ヶ岳南峰 7:40- 7:45
針ノ木小屋 10:10-11:20 赤沢岳 9:40- 9:50 布引岳 8:10
2700mP 11:50 鳴沢岳 10:30-10:50 テント場 8:35- 8:50
蓮華岳 12:10-13:00 新越乗越山荘 11:15-11:20 爺ヶ岳 10:30
針ノ木小屋 13:35 岩小屋沢岳 12:10-12:15 種池山荘 10:55-11:15
種池山荘 13:15-13:40 扇沢出合 13:20
爺ヶ岳 15:25-14:35 駐車場 13:30
冷池山荘 15:35-15:45 扇沢橋 13:40
テント場 15:50 大町温泉 13:50-15:10
高田 18:00

9/11

 台風17号が東北地方の東をかすめて北上している影響で、風が強い。148号は雨。長野県に入ると止むが、風は強く、気温も下がってきた。カーラジオが白馬岳で初雪と報じている。

9/12

 昨日の風は止み、台風一過の秋晴れの上天気だ。車道をぬう登山道は、あまり整備されている様子はなく、木の枝がザックに引っかかる。針ノ木雪渓の雪は、ほとんどない。
 大きな沢を二つ渡り、湧水を過ぎ、しばらくして大沢小屋。「8月末日で終了」の張り紙があり、閉まっていた。人が少ないのだろう。雪渓の残雪の様子を書いた張り紙もあり、よく見て頭に入れる。裏のトイレを借りる。
 しばらくして樹林を抜け、斜面のトラバースが終わると、広い河原に出る。左手奥から赤石沢が合流する。河原で動くものがあるので、よく見ると野猿だ。2頭の子猿を連れた夫婦猿が、木の実を食べている。右前方の岩の上にも数頭いて、ボス猿を先頭に数十m下の河原を下っていく。子猿がはしゃいでいる。
 右岸に渡る。先ほど猿達が通った残雪を横切る。トラバース気味に右岸を行くと、「のど」。沢が狭くなっているところだ。立札があり、左岸に渡るように書かれている。高巻きルートがあり、上に鎖が光っている。沢の前方に残雪が見えるが、その下で右に抜けられそうなので、そのまま「のど」を通過することにする。残雪のすぐ下まで行って、左岸に渡る。水量が少ないので濡れることもなかった。この後、ガラ場登りになる。悪戦苦闘の末高巻きルートに出る。右手からマヤクボ沢が下りてくる。休憩。冷たい水で顔を洗う。
 再度、右岸に渡る。もう残雪はなく、お花畑が広がる。ウメバチソウがたくさん咲いている。ウサギギクもまだある。雪が消えて間もないのだろう、春と秋が同時進行している。先ほど追い越して行った人が昼食をとっているのを見たら、無性に空腹感が増し、腹ごしらえする。
 杉の丸太で整備されたジクザクの道になる。もう稜線はすぐそこだ。やっとのことで峠に出る。小屋の屋根に布団が乾してあり、アルバイトが挨拶する。キャンプ場に行って設営。

 蓮華岳へ行くことにする。小屋に寄ってキャンプの手続きをする。
 小屋の前から急登が始まる。約30分で2700mのピーク。二重山稜になっている左側に道がある。ガラ場の中には、コマクサの群落があり、この時期にもまだ、咲いているのがある。緩やかな稜線をたどって蓮華岳につく。3人の先客有。1時間ほど山の話をする。雲が覆い、真っ白になる。下る。

 小屋で缶ビールを買う。550円也。テント前の陽だまりで開ける。水を買いに行く。300円/2リットル。
 昼寝。4時半起床。夕食の準備。槍ヶ岳が浮かぶ。

9/13

 夜中、風がテントを揺さぶっていた。おまけにかなり冷え込んだので、よく眠れなかったが、眼がさめた時はもう5時。あわてて起きる。
 朝食をとり、テントをたたむ。45分遅れで出発。気温は5℃。雲が全天を覆っており、好天は望めない。山脈に沿って少し雲が切れているだけだ。

 今日は、あまり調子がよくない。針ノ木岳の頂上まで喘ぎ喘ぎ登る。頂上に着くと、3人パーティが種池方面に下りて行った。子連れの夫婦が岩かげで風を避けている。子どもが寒がっていた。ガスっていて何も見えないが、時々ガスの切れ間から槍が見える。その槍の下に、高瀬ダムが大きく広がっている。10人ほどのパーティが登ってきたので出発する。
 下りは急傾斜だ。これを逆から来て登るのは大変だ。思いきり下って、コルに着く。そして、今度は登り。スバリ岳だ。ここで、もう、種池から来たという人に出会う。昨日は、五竜からだという。何という早さだ。

 スバリ岳は、北西にのびる尾根を少し下り、それからトラバースして北の尾根に出る。まったくガスっていてすぐ後ろのスバリ岳が見えない。せまい岩稜が続く。赤沢岳の登りも長い。黒部湖がガスの切れ間から時々見え、そのむこうに立山、剣岳の下の方だけが見える。それでもたまには、頂上が見えることもある。

 赤沢岳の手前でポツポツあたってきた。白いものが混じっている。あられ混じりの雨だ。雨具を着る。100m程下る。丁度この辺りの下を黒四への関電トンネルが横切っている。そして、鳴沢岳の登り。雷鳥が出てきて、頂上まで道案内してくれる。頂上で先に行った3人パーティに追いつく。しばらくして出ていく。ここで空腹をいやす。

 新越乗越山荘の手前で、また、3人組に追いつく。山荘は、中で人が動く気配がするだけでまったく静かだ。かなり疲れてきたので休む。彼らは、そのまま出て行った。鳴沢岳で1枚脱いだので、寒くなる。体が冷えないうちに歩きだす。

 岩小屋沢岳の登りも長い。少しバテ気味なのでよけい長く感じる。所々で立ち止まり、呼吸を整えては登る。2623mのピークがあり、少し下っていよいよ岩小屋沢岳だ。着くと、丁度3人組が出て行った。この3人組、50代の男性2人と20代後半の女性1人という奇妙な取り合わせ。小屋泊りで、今日中に扇沢に下りるという。種池までずっと追いつ追われつだった。

 岩小屋沢岳から、種池までは、実に長かった。小ピークがいくつかあり、その度に喘ぎながら登る。最後の小ピークを下ったところで3人組に追いつく。道は、左に回り込んで樹林帯に入る。高度がかなり下がった感じだ。このあと快適な尾根道が続く。種池小屋への最後の登りには参った。バテバテで登り、キャンプ場に出た時には、ホッとした。

 種池小屋前には、何組かの登山者がたむろしていたが、例の3人組は見えなかった。これから新越の方へ行く人、冷池へ行く人。扇沢から登って来た人が大半だ。時間が早いので冷池まで行くことにする。

 爺ヶ岳の登りは、ダラダラ坂だ。上部では、少し急になる。頂上は、巻き道があるが、せっかくなので登ることにする。腹の調子が今一なのでオオキジを打つ。少し調子がよくなる。あとから来た人たちが、巻き道を通って行く。

 中央峰とのコルに、「コマクサを守れ」の看板があり、冷池から来た人が、コマクサを探していた。この峰には登らずに行く。その先の北峰には登る道がないようだ。トラバース道をずんずん進む。そして、冷池への下りにかかる。グングン下って、赤岩尾根の頭までくると、もう冷池は、すぐそこだ。赤岩尾根への分岐を過ぎたところで、下から登って来た4人連れの女性の一人に声をかけられる。見ると、全国連盟の事務局にいた滝沢さんだ。鹿島槍から針ノ木へ行くという。互いに激励して別れる。道は、樹林帯に入って最低鞍部になり、小屋まではまた登り返すことになる。そしてテント場は、そのまた上だ。

 テント場には、すでに5張りほどのテントがあった。少し傾斜があるが広い所が空いていたのでそこに張る。水と缶ビールを買いに行く。水、150円/1リットル。ビール、570円。
 立山と剣を紅く染めて夕日が沈んで行った。大窓、小窓、三の窓が燃えていた。

9/14

 「朝焼けがいいときは、雨になる」と、いいながら鹿島槍へ登って行く人がいた。東の空が真っ赤になっていたが、西の空は、真っ黒な雲に覆われている。
 戻ってきてから撤収する予定だったテントを先に撤収し、ザックをハイマツの脇に置いて、空身で登ることにする。もう残っているのは数張りだった。誰かの予報通り、雨が降り始める。

 樹林帯を抜け、布引岳の登りになる。中年婦人、2人を追い越す。空身だから調子がいい。上から降りてくるパーティにも幾つか出会う。雨はいっこうにやむ気配がない。左手から容赦なく降りつけてくる。眼鏡が濡れて見にくいのではずす。布引岳の頂上は、左に巻いて素通りする。いったん下って、いよいよ頂上への登りにかかる。鎌尾根の降り口付近には、ホタルブクロが無数に咲いていた。そして、ダイレクト尾根がせり上がってきて、道が東側に回り込み、風が陰になってあたらなくなってホッとするとともに頂上へ飛び出した。数人が雨の中にいた。1パーティが北峰の方に向かっていった。入れ違いに1人登ってきた。何も見えないのですぐに降りることにする。

 下りは、今度は右手から雨風があたる。しばらく行くと、布引岳の下で追い越した老夫婦とすれ違った。布引岳を左に見て通過し、斜面を滑らないように慎重に降りる。ハイマツ帯の道で、先行パーティが立ち止まっている。近づくと、「グルルルルーー」と声を張り上げて、1羽の雷鳥が飛び立った。彼女は、雷鳥を見ていたのだ。雷鳥はもう、羽先が白くなっている。このパーティを追い越していくと、今度は、ハイマツの中から雄の雷鳥が出てきて、上の方へ走り去っていった。

 テント場には、もう2張りのテントが残っているだけだった。オオキジを打って小屋へ向かう。小屋の前には、樹林帯の直前で追い越した大学生風の4人パーティが休んでいた。荷物を担ぐとさすがに歩くのが遅くなる。ぐっとペースを落として登る。30分程登って腹ごしらえしていると、4人組が追いついてきた。北峰のすぐ下では、鹿島槍の頂上で出会った人が追いついてきた。都合、6人が列をつくって登る。彼らは爺ヶ岳に登っていったので、そのまま下る。2人の女性とすれ違っただけで、雨の平日という感じがする。

 種池小屋も昨日とは違って、休憩所に数人いるだけで閑散としていた。みな扇沢へ降りるようだ。昼食をとっていると、鹿島槍の頂上直下ですれ違った中年3人組がやってきて、そのまま扇沢方面へ降りていった。

 ようやく雨もあがったようなので雨ズボンを脱ぐ。そして出発。時々日が当たるため、暑くなる。雨具も脱ぐ。シロバナヘビイチゴの実が赤く熟れている。シラタマノキの実も大きくふくらんできている。まだ時々雨があたるが、暑くて仕方がないため、Tシャツ一枚になる。扇沢のトロリー乗り場のスピーカーの声が聞こえ始める。扇沢の水の音も聞こえるが、まだまだずっと下だ。種池を先に出た、4人に追いつく。あと「40分」の道しるべがあり、車道を行き交う車の音が大きくなる。「もみじ坂」の標識が倒れている所へくると、もうすぐ車道だ。

 橋のたもとに2台のタクシーが待っていた。欄干のそばにザックを置き、駐車場まで車を取りに行く。観光バスが何台も上がっていく。無料駐車場は一杯になっていた。車で橋まで戻り、ザックを乗せる。大町温泉で汗を流し、二度目の昼食を食べて、家路につく。帰りは、鬼無里、戸隠経由。


登山記録トップ 年代順目次へ 山域別目次へ 写真のページ